Makerムーブメントとパンク文化
ArduinoやRasberry Piに興味が出てきた。以前から興味はあって、MakeやInstructablesを眺めるのは好きだった。もちろんサイトに掲載される作品は玉石混交だけど、石の中にも晴天を突き刺すようなとんでもない創造性のエネレギーがあったりする。不思議なことだと思っていたんだけど、 Make:PROJECTSの書籍をパラパラと眺めたら謎が少し解けたかもしれない。
古典的な工学は、A地点からB地点へ向かう厳密なプロセスに依拠しています。一方、 Arduino 流のやり方は、道に迷ったあげくC 地点にたどり着いてしまう可能性を楽しんでしまいます。 これが私たちの愛するtinkeringのプロセス̶ 開放されたメディアで遊びながら予期しないものを探す行為です。また、そうした探索の過程で、ハードとソフトの両面から試行錯誤を繰り返すのに最適なソフトウェアパッケージを見つけました。この章では Arduinoの流儀に影響を与えた哲学、出来事 、そしてパイオニアたちを紹 介します。
Arduinoをはじめよう!5p
Arduinoをはじめよう 第3版 (Make:PROJECTS)
- 作者: Massimo Banzi,Michael Shiloh,船田巧
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2015/11/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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tinkeringというのは試行錯誤を意味する英単語で、ヌーヴェルヴァーグの監督たちはtinkerersと呼ばれていた。A地点からB地点までの正確な設計図ではなくて、いじくりまわしたり、バラバラにしたり、パッチをつないだりしながら、試行錯誤を楽しみ、C地点にたどり着く。ギターのペダルのつまみを弄るような感覚で作っていくのがArduinoの流儀だそうだ。
Arduinoをはじめよう!11p
パンクの精神性は音楽性でもなく意図的な態度でもなく・・・もちろん派手な服装や髪型のことではない。如何に子供達に「君もできるよ」と教えてあげることがパンクの本質だ。子供が自分にはできないと失望したとき彼らの意欲は雲散霧消する。
ラスマス:今どきのゲームの中には,エンジニア数百人がかりで3Dエンジンやらレンダリングやらを駆使して作ったものもあります。子どもにとって,プロが作るようなゲームはとうてい自分には作れないと思い知ることほど意欲を損なうものはありません。「これなら自分にもできるよ」と言えれば,おおいにやる気が出るのです。今では私にもゲームを書くなんてとても無理ですね,少なくとも市販品と比較できるようなレベルのものは。
パンクを言い換えるとD.I.Y( Do It Yoreself)*1になる。更に言葉を変えると超越主義になるのではないか。米国の個人主義の思想の源流だ。近代的な価値観において、つまり、工業社会において自分で製品を作る必要はない。なぜならば工場が作ってくれるからだ。といっても不思議なもので人間は何かを作りたがる。仮にそれが工場で作られる製品より劣っていようとも。
Makerムーブメントはパンクと地続きなのだ。ぼろぼろのガレージから様々な怪物バンドを生み出した。ガレージから創業した会社が世間を席巻している。原動力は「自分でも作れる」だ。性能や洗練度は稚拙なものでもいいから、プロトタイプならば作れることができる。面白いプロトタイプができれば性能や洗練度を高めて製品化してくれる大人達に頼ればいいからだ。そう。夢があるのだ。
自分自身で作る。それは希望に満ち溢れた行為かもしれない。コンバインだって自分で作れるんだぜ。最高。
追記
『Maker is You!』というD.I.Yのキュレーション・メディアを立ち上げました。面白いものづくりを紹介していきます。よろしくおねがいします。
*1:ちなみにD.I.Yという単語はイギリスで用いられる。Do It Youreselfと省略しないで発音するのが米国式だ。