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なつやすみ日記

猫のような日々

人に伝わるか伝わらないかってことじゃないの?

音楽にはCDで聴いてるだけじゃ伝わらない部分がたくさんある

http://azanaerunawano5to4.hatenablog.com/entry/2013/12/26/162736

 

 録音されたものとライブを比較するのはあまり良い喩えではないとブコメでも突っ込まれてますが、そこは一先ず置いておいてCDを聴くだけでは良さが伝わり難い・・・というか、音楽を制作する時点で、また楽器を選択する時点で、色々な面白さがクロスして、総合的にリスナーに配慮をしていることなのかなっと。また、全ての要素はリスナーには伝わらない。

 

 どんなに楽理的に美しいフレーズを作っても、楽理的知識が無い人には伝わり難いかもしれないが楽理的知識がある人間は感動することが出来る。もの凄く凝った音響処理をしても100円ショップで購入したイヤホンを使っている人には意味がないが、それなりのオーディオを所持している人は驚嘆する。音源は好きではなかったが、派手なライブパフォーマンスが好みで好きになるかもしれないが、地味で淡々としたパフォーマンスが好きな人にはこの限りではない。かわいい女の子がプロモーションのために撮影したバンドマンの写真を見てカッコイイと思うかもしれないが、男の子にとってはそんなこと関係ない。

 

 人文系の社会学とかちょっとかじると、それはコーディングされたテクストをデコーディングすることとかなんとかって言うらしいけど、そんな難しいことじゃなくて、それぞれどこに魅力を感じるのが違うというだけだ。音楽雑誌がミュージシャンの学生時代の思い出を語らせたり、好きなタイプの娘を尋ねたりするのもそういうことなのだろう。*1

 

 人間が共感するところはそれぞれ違うし、語る切り口も評論家達で異なるし、女の子が好きな男の子のタイプだって十人十色だ。そして、物を作って喜んでもらうためにあらゆるレイヤーを整えていく。それが僕たちがふだん接しているポップスはそういうふうに多くの人が関わって作っているんだろうなと想像している。レコード会社の仕事というのはおそらくそういうもので、実は音楽以外の部分をクリエイトすることがかなり重要な部分なのではないかと思っている。

 

 最近読んだこの本に物作りにおいて、すごく良い事が書いてあったので紹介したい。

 

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

 

 たとえば安売り家具屋の店頭に並ぶ、カラーボックスのような本棚。化粧板の仕上げは側面まで、裏面はベニア貼りの彼らは、「裏は見えないからいいでしょ?」というメッセージを語るともなく語っている。建築住宅の扉は、開け閉めのたびに薄い音を立てながら、それをつくった人たちの「こんなもんでいいでしょ?」という腹のうちを伝える。

〜中略〜 

 様々な仕事が「こんなもんでいいでしょ」という、人を軽くあつかったメッセージを体現している。

〜中略〜

 また一方に、丁寧に時間と心がけられた仕事がある。素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまずつくられる料理。表には見えない細部にまで手の入った工芸品。一流のスポーツ選手による素晴らしいプレイに、「こんなもんでいいで」という力の出し惜しみはない。

 このような仕事に触れる時、私たちは嬉しそうな表情をする。なぜ嬉しいのだろう。

 人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。そして、それが足らなくなると、どんどん元気がなくなり、時には精神のバランスを崩してしまう。

『自分の仕事をつくる』p9-p10

 人間は誰しも大切にされたいし、無下にされたくない。だから、ちゃんと物を作る人は使ってくれる人の気持ちを大切にして作りましょう、というのが西村さんのメッセージだ。何を持って大切かどうかは人それぞれニーズが違うと思うけど、ポップミュージックに於いてはリスナーが置いてけぼりになっているものは聴きたくない。匿名掲示板でAKB48や嵐が叩かれるけど、僕は誰かのニーズを満たして喜んでいる人がいるということは表現行為として伝わっている証左ではあるんだから、リスナーが置いてけぼりになっているとは思わない。というのは、僕はもともとバンドをやったりするのが好きで、バンドをやっている友達も多いんだけど、ファンが一人も付かずに解散していくバンドを沢山見て来た。これを読んでいる人の記憶にも学生時代にチケットを売られてライブハウスに行ったはいいけど、知り合いしかいなかった、という完全に内輪受けしかしていない光景を見たことある人は少なくないとおもう。誰にも伝わっていない状況はなぜ起きるか僕は考えたんだけど、それは自分のメッセージを伝えるために、聴いてくれる人を大切にしなかったからだと思っている。

 

 ただ、僕は昔から一人もファンがいないバンドと大人気ポップグループとの差がよくわからなくて、もちろん演奏の上手下手はあると思うけど、コアな部分の楽曲のよさ、その人の個性の面白さにそれほど人気グループと比べて差異があるとは思えなかった。そして、ほとんどの友人達が自分達の表現を一つも伝えられずに解散していったり音楽自体をやめていった。悲し過ぎるよ。それじゃ僕がその人達の良さをリスナーにパッケージして届けたらどうなるんだろうか・・・?と考え、いま僕は『バカみたい』というバンドを手伝っている。

 

 このバンドは楽器もそんなに上手くなくて、楽曲もそこまで構築されたものではないし、コミュニケーションも下手な人達の集まりで、とうぜん友達も少なかった。*2おまけに機械も扱うのが下手で、MTRの録音ボタンもわからないほどだった。

 必然的に音源も作らないから、だらだらとブッキングライブを続けていただけだったが、2012年8月頃に僕は彼らに音源を作った方がいいと持ちかけた。

 

 ちなみにこれが2011年5月の時のライブ音源だ。音質もよくないし、演奏もバラバラで、ピッチもよくないし、音楽的にあまり気持ちの良い演奏とは言えない。ただ、彼のやりたいことは僕はわかっていたからこれでもかっこいいとは思うけど、知らない人には伝わり難いだろう。 

 

  これが2013年6月に中村宗一郎氏のピースミュージックで録音された同じ曲だ。クオリティー違いは一目瞭然だろう。エンジニアの中村宗一郎氏は録音技師として非常に尊敬に値するべき人で、その知識、手腕はほんとうに素晴らしいもので、バンドがやりたかったことをこのクオリティーで録音出来たのは彼がいなかれば達成出来なかった。『バカみたい』を気に入って頂いて、事前の打ち合わせでリハーサルスタジオに半年間何度も来ていただいて、演奏の細かいミスや調整をしてくれた。本人達が気づいていない部分を是正してくれたのだ。しかも無償で。本当に良いものしか作りたくない人で、ただお金を貰って仕事をこなすような人ではない。自分が関わる以上は真摯に作品を作りたいという強い思いがある人だと思った。

 

 六月に作品が出来てジャケットを作成しようと思っていた。普段から自分に自信がない彼等はあまり納得は行く物が出来たと思っていなかったけど、僕はすごくいいものが出来たと思った。これなら誰かに伝えることが出来るはずだ。そう思って音楽好きなら誰でも知っているイラストレーターの本秀康さんにお願いをしたらスンナリと依頼を受けてくれた。20枚に1枚程度しかジャケットの依頼は受けないそうだが、すごく気に入っていただき描いて頂けることになった。既にお気づきかと思いますが、上記のSoundCloudのサムネ画像がそのイラストである。当然だけど、ライブ音源のクオリティーでは依頼を受けてくれなかっただろう。良いものを作ったから描いて頂いてくれた。

 

 Twitterのフォロワー数がまだ40人程度しかいなくて、本当に友達がいないけど、良いものを作ったから徐々に伝わってきていて、少ないながらもレコメンドも集めることが出来た。たぶん、これからもその繰り返しになるんだろうけど、作品を作るということ、誰かに何かを伝えるということの片鱗を少し学べることが出来たと思う。すこしでも人に伝わってきている。ほんとうに素晴らしい経験が出来ていると思っている。

 

 それでは一月十八日からタワーレコード渋谷、新宿店で初流通になります。よろしくお願いします。

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*1:これはもちろん皮肉です。

*2:バンド経験者ならお分かりとかと思うが、イベントを行うにしても結局友達の多さが重要になってしまう