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なつやすみ日記

猫のような日々

僕の部屋はゲットーかもしれない。

 ゲットーという言葉がある。ユダヤ人にとっては忌々しいアウシュビッツを想起させる言葉であり、黒人文化では貧民街を差す言葉である。語源は中世ヨーロッパでヴィネツィアの鋳造所(ゲト(Gheto))にユダヤ人が隔離されていたことが由来の一説である。*1

 

少し前に西田亮介氏,工藤啓氏の無業社会を読了した。

無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)

無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)

 

 

 無業者は働いていないためお金をそんなに持っていない。外出して快適に過ごせる場所はどこもお金がかかる。大学にも職場にもどこにも居場所がない彼らがいれる場所はわずかだ。それは図書館等の無料で使用出来る公共施設だけで、無業者の溜まる場所であると書いてあった。外出先で過ごせる場所が少ないということは自室で過ごすことが増えるということである。そのため対象者から調査をすることが難しいという側面がある。*2 

 

玄田有史氏の著書「孤立無業(SNEP)」によると、孤立状況にある国民は無業者だけではなく、全世代が孤立している傾向にあると論じている。

 

これらの変化は性別、年齢、学歴によらず、無業者になると誰でも孤立しやすくなるといった傾向が産まれつつあることを意味しています。いわば、「孤立の一般化」が進んでいるということです 。

P71

 

孤立無業(SNEP)

孤立無業(SNEP)

 

 

 この場合の無業者とは、ニートのような若年無業者のことだけではなく、専業主婦や定年退職をした初老の方も含める。仕事をしていないという意味で用いられている。玄田氏は所得、居住地域の人口規模、学歴、性別 、要介護者が世帯にいるか等を分析して、孤立にどう影響するか調査している。また、調査によると学生の孤立化も進んでいることも判明している。*3

 定年退職をした旦那が自宅にいつもいて鬱陶しいために熟年離婚をしてしまうということがよく報道されているが、無業者に対して受け入れる場所は社会にないため自宅にいるしかないのである。 海外旅行をしたことがある方は分かると思うが、日本には談笑を交わすような広場が存在しない。街を歩けば、タバコ屋の前で楽しそうに談笑している集団を見かけるがそのような光景は日本ではあるだろうか。あるとしても大学街のような既に仲の良い集団がいる場所であって、ベッドタウンでそのような光景を見るのは稀であると思う。あるのは地平線まで続くコピペされた住処であり、そこに住む核家族だけなのである。

 

 

僕の部屋は僕を守るけど
僕をひとりぼっちにもするよね?
やわらかい地獄ってもう、天国にも似てるから

 


銀杏BOYZ - ぽあだむ (MV) - YouTube

 学校にも、職場にも居場所がない人は、自室に籠るしかなくて、ひょっとしたらこの部屋が僕を隔離しているかもしれないし、社会から居場所を失った人は自室に隔離されてしまうのかもしれない。社会から拒絶された者が隔離される新しいゲットーだ。

*1:その他にも

ヘブライ語で「分離」を意味する「ghet」に由来する。
イタリア語で「小地区」を意味する「borghetto」に由来する。
ドイツ語で「格子」を意味する「Gitter」に由来する。

などが由来とされている。ゲットー - Wikipedia

*2:玄田有史:孤立無業(SNEP)

*3:P35