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なつやすみ日記

猫のような日々

行政が作るコワーキングスペース

コワーキングスペース、インキューベーションオフィス、シェアオフィス。最近、そういった施設を行政が設立している。例に漏れず僕の住む東京都郊外にも存在している。ただし利用者はほとんどいない。言うまでもないが施設維持には税金が投入されている。

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平日の午後5時過ぎだったが利用者はゼロ。利用時間内にも関わらず利用者が誰もいないから室内の明かりは消されていた。場所は東京都羽村市羽村市産業福祉センター内にある。名称は「iサロン」だ。福祉センターの職員に尋ねてみると月間利用者数は僅か30人足らずだそうだ。僕やあなたは羽村市の地縛霊とビジネスの情報交換ができる、ということだ。

https://www.city.hamura.tokyo.jp/0000008179.html

 

羽村市産業福祉センターは羽村図書館の隣にある。僕は本を借りるついでに覗いてみた。撮影した写真はその時のものだ。後日、本を返却するときにまた様子を覗きに行くと利用者が誰もいない室内に派遣された中小企業診断士が暇そうに書類を眺めていた。「暇そうですね」と声をかける。僕は彼と雑談をすることにしたのだ。そして彼が教えてくれたのだが東京都は創業支援施設の開設を進めているらしい。さらにムーブメントは東京都に限った話ではなく、全国的な動きになっているそうだ。地方在住の知人友人曰く「私の街にもできた」と・・・。もちろん利用者はあまりいない上に傍目から見て何かの成果が出ているようにも見えないとの談。試しに適当に『◯◯県 コワーキング』と検索すると地獄のような光景が広がる。

 

首相官邸がプレスリリースしている日本再興戦略改定2014改訂に以下のことが書かれている。

ベンチャー支援
ベンチャー支援については、より効果的で、従来の取組にない施策を
実行することが必要である。
①「ベンチャー創造協議会(仮称)」等による大企業の巻き込み
ベンチャー企業そのものに焦点を当てた施策、大学発ベンチャー
支援などの従来の施策のみならず、既存企業を含めた日本経済全体
での挑戦を推進するため、以下の施策を講ずる。
ベンチャー企業と大企業との連携や大企業発ベンチャーを創出す
るため、大企業内に眠る起業希望者の一時的な受皿となることも
視野に入れつつ、ベンチャー企業と大企業のマッチングやビジネ
スシーズの事業化を支援するプラットフォームとしてベンチャ
ー支援に協力的な大企業等から成る「ベンチャー創造協議会(仮
称)」の創設
・全国津々浦々のベンチャーに取り組む個人や団体の「出会いの場」
としての情報ハブの構築
国際会計基準IFRS)の適用促進等を通じた大企業等との M&A
よるベンチャー企業の出口戦略の拡大
・兼業・副業等の促進や日本政策金融公庫等の低利融資制度拡充に
よる廃業資金を含めた第二創業の支援
・創業希望者をプールした「後継者人材バンク」の開設
クラウドファンディングを活用した地域資源活用型ベンチャー
の起業支援モデルの検討
・種類株式活用促進策の検討

日本再興戦略改定2014改訂 P33

全国的に施設が出来ているのは国家政策に依るものだろう。日本再興戦略改定2015改訂 ベンチャーの定義も書かれている。

(1)「稼ぐ力」を高める企業行動(≒前向投資)を引き出す
ⅰ)「攻め」のコーポレートガバナンスの更なる強化
・企業と投資家の建設的対話の促進(株主への情報開示促進)
・成長志向の法人税改革
・民間投資促進に向けた官民対話
ⅱ)イノベーションベンチャーの創出
・「ベンチャー・チャレンジ2020」の推進
-米・西海岸レベルの国際的拠点形成
(特定研究大学、卓越大学院)
シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト、
エコシステムの形成
イノベーション・ナショナルシステムの本格稼働に向けた
大学改革
-運営費交付金の重点配分導入による大学間競争の促進
ⅲ)アジアをはじめとする成長市場への挑戦
・「質の高いインフラパートナーシップ」の展開
(2)新時代への挑戦を加速する(「第四次産業革命」)
・IoT・ビッグデータ人工知能による産業構造・就業構造変革
の検討
-民間投資と政策対応を加速化する官民共有の羅針盤策定
・セキュリティを確保した上でのIT利活用の徹底
-サイバーセキュリティ対策の抜本的強化
-IT利活用の推進、マイナンバー利活用範囲の拡大

日本再興戦略改定2015改訂  P1

どうやら政府が定義するベンチャーとはシリコンバレーに存在する企業群を指すようだ。米国で普及しているコワーキングスペースを日本各地に作るのも政策の一環なのだろう。ただし、米国の都市部で一般的になっているシェアハウスもそうだが、コワーキングスペースが盛んな理由の一つは米国の都市部の家賃が尋常ではないためだろう。

シリコンバレーでは、この10年ほどでIT系の職が急増したが、同時に家賃も高騰した。ワンベッドルームのアパートの平均的な月額家賃は、サンノゼで2186ドル、オークランドで2469ドル、サンフランシスコでは3361ドルにもなる。

http://usfl.com/2015/10/news_articles/90657

これはシリコンバレーに限った話ではなく米国都市部の家賃は高額であることで知られている。つまりシェアハウスが一般的な理由は家賃が高額であるためだ。必然的にシェアハウスに住む人間がオフィスを借りることが出来るわけもない。オフィスをシェアすること、コワーキングのような文化が発達した理由の一つだろう。そもそもアパートを一人で借りていればそこで仕事をすればいいし登記も借りているアパートですればいいのだがそれができないからコワーキングスペースを借りているのだ。

 

誰もが知るような話としてシリコンバレーでハイテク産業が発達した理由は工学系の大学があったからだ。政府が「西海岸レベルの国際的拠点」を作るために産学提携を掲げる理由も同じだろう。だが、東京大学東工大の付近ならともかく、東京の郊外、いや、大学の影すらもないようなド田舎にコワーキングスペースが作られている。政府からのトップダウンで指示が下り、妄想の産物のような施設が作られる。時代は違えど箱物行政と批判された時代から何一つ本質は変わっていないのだ。

 

箱物教育行政の犯した大罪―国民総愚民化

箱物教育行政の犯した大罪―国民総愚民化

 

 

追記

僕は羽村市青梅市の境目に住んでいる。青梅市にも昨年末にコワーキングスペースが設立された。『おうめ創業支援センター Begin!』だ。

http://www.ome-begin.com/

 

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 やっぱり利用者はいませんでした。

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 本棚にマルチビジネス御用達のロバート・キヨサキの本があった。

 

ここは1日利用に500円、月間3000円で利用出来るそうだ。付近の青梅市の中央図書館は有線LANでインターネットが使えるし、コピー機も使える。「この施設のサービスは図書館でも無料で使えるのですが・・・?」と職員に質問してみたところ自宅で勉強ができないから図書館に行きたい需要があるように有料のコワーキングスペースも存在意義がある、と回答をいただきました。

 

写真の奥に施設のポスターがある。彼はここ数年間青梅市の商工会関係の仕事を請け負っている。市内の人間には知られていることだ。

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僕がお邪魔しているときも清掃業者か複合機のリース業者かわからないが頻繁に営業の出入りがあった。創業と言いつつも皮肉なことに儲かるのは彼らなんだよね。