『忘却のさちこ』新宿「上海小吃」
週刊スピリッツで連載中の『忘却のさちこ』というグルメ漫画がある。結婚式を彼氏にバックれられたという悲しすぎる過去を持つ女性が主人公のさちこさん。さちこさんは美味しいものを食べている間だけ悲しい出来事を忘れていられる性格です。
基本的に実在する飲食店を取材して漫画にしているようです。でも、店名や地名はあまりはっきりさせない。知っている人だけがわかるようにしてあるんですよね。少し前に新宿歌舞伎町にある上海小吃を取り上げていました。
上海小吃は歌舞伎町の薄暗い路地中という立地だったり、日本語が通じなかったり、日本人から見るとゲテモノとしてか思えない料理があるし、お酒の持ち込みも可能だったりするせいで*1、歌舞伎町の路地に迷い込んだら東南アジア方面にワープしてしまったような錯覚を授けてくれる。もちろん味付けも日本人の味覚に合わせたローカライズはしていない。まるで歌舞伎町を根城とするチャイニーズマフィアの食堂になっていそうな雰囲気が魅力なんですよね。実際、インファナル・アフェアという香港制作のマフィア映画の撮影に使われているそうです。
狭い路地にお店が二つ連なっているのも東南アジアぽい。店員さんは路地を跨いで料理を運んでいる。
もともと上海小吃はサブカル界隈の人たちに有名なお店で僕もライターの九龍ジョーさんに教えてもらった。どういう経緯かわからないけど、おしゃれ雑誌やテレビ番組でよく取り扱われたりするのは何らかの背景があるからだろう。雑誌編集者やテレビマンがこの辺りで飲み歩いていたからだろうか。
ローカライズをしていないので日本人には馴染みの薄い食材も使っているんですよね。昆虫や内臓類の変わったメニューもあるから、ゲテモノ好きにも知られているんだけど、上海小吃の看板メニューは「蛤の甘辛炒め」と「あげパン」のセットですよ。
そのまま食べても美味しいんだけど、蛤のスープに浸してから食べると気分はもう上海。
あげパンを浸して食べたサチコさんのセリフが上海小吃の魅力をまとめています。
「あ・・・この濃い目の甘辛なタレが、あげパンの甘さをさらに引き立てて・・・!!この雰囲気にこの料理・・・まるで旅行しているみたい・・・!!!」
そうなんですよ。旅行しているみたいなんですよね。新宿歌舞伎町にどこでもドアが設置してあって異国に行けてしまうわけです。上海小吃はそういうお店です。以上。
*1:ビール瓶はダメで缶ビールの持ち込みは何故か大丈夫だった。こういう理不尽なところも外国ぽい