週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年15号
僕は週刊スピリッツの長年の読者である。
僕は週刊ビッグコミックススピリッツを長年読み続けている。浦沢直樹氏が20世紀少年を連載していたころからだから15年に渡って読み続けているわけだ。しかし、最近は売り上げが低迷しているせいかコンビニで手軽に購入することが難しくなっている。2、3店渡り歩いて一冊在庫があればいいほうだ。編集部もこの事態に気づいてきたのか他誌に遅れながらも2016年1号から電子版を配信するようになっている。 ちなみに現在の発行部数は約16万5000千部程度である。
人気が無ければ10週の連載で打ち切る少年ジャンプのように、スピリッツも打ち切りのお家芸がある。鳴り物入りで始まった連載、しかし、巻末方面で連載が目立つようになりいつの間にか他誌に島流し、無かったことにされるという編集方針である。最近は曽田正人氏のテンプリズムが他誌どころかWeb連載に島流しされるという事態が起きている。
その他、某大手広告代理店と繋がりが強いことで知られている。メディアミックス戦略の一環として連載している作品がいつまでも連載していることがある。大人の都合で打ち切りに出来ないのだ。その他にも大御所作家の暴走、週刊誌である必要性がないほど毎週連載しない作家が多いため、号によっては看板作品が一つもなかったり、色々と素敵な雑誌である。
2016年15号は以下の掲載でした。
天真爛漫!お披露目グラビア「菅井友香×土生瑞穂×平手友梨奈」
●人気快走!駅伝大会開幕カラー『かなたかける』高橋しん
●メガヒット巻中カラー『恋は雨上がりのように』眉月じゅん
●『アイアムアヒーロー』映画化記念アンソロジー第4弾!乃木坂太郎
●『アオアシ』小林有吾
●『世界はボクのもの』若杉公徳
●『HIKARI-MAN』山本英夫
●『100万円の女たち』青野春秋
●『村上海賊の娘』和田竜+吉田史郎
●『夕空のクライフイズム』手原和憲
●『ダンス・ダンス・ダンスール』ジョージ朝倉
●『おかゆねこ』吉田戦車
●『シェアバディ』吉田貴司+高良百
●『僕はコーヒーがのめない』福田幸江+吉城モカ+川島良彰
●『猫工船』カレー沢薫
●『ふろがーる!』片山ユキヲ
●『ふつつかなヨメですが!』ねむようこ
●『るみちゃんの恋鰹』原克玄
●『させよエロイカ』高田サンコ
今号のハイライト
●『かなたかける』高橋しん
高橋先生は箱根駅伝出場経験者らしい。とりあえず前作『花と奥たん』の完結をあんまり覚えていないのですが・・・突っ込みは野暮でしょうか。今作もスピリッツのお家芸であるフェイドアウト型打ち切りに合わないか若干不安です。連載8回目。
●『闇金ウシジマくん』真鍋昌平
沖縄編。サンサンと照りつけるような太陽に青い海というイメージと正反対のイメージを突きつけてくる。空洞化する郊外が永遠と広がっていくだけなのだ。実際、沖縄の失業率、生活保護率やひきこもり率の割合は全国トップクラスである。逃亡者である Mを捕まえようと牛島が迫る。
●『HIKARI-MAN』山本英夫
前週から連載再開。このまま島流しにされないかヒヤヒヤしていたが山本先生は単純に筆が遅いだけのようだ。ホムンクルスも休載続きだったもんね。山本英夫先生はキチガイを描かせたら天下一品。「ニャ〜」って擬音が怖すぎる。謎の発光体に変身した主人公 vs サイコパス格闘家の戦いがはじまる。今作のライバル扱いになりそうなキャラクタとの一戦。
・次号予告
またかよ!またバンド漫画かよ!世界最強の男がロックバンドでも頂点を目指すという「モッシュピット」の後釜枠なのでしょう。最強の男が不良高校で乱闘を繰り広げて圧勝してしまったり、バンド漫画なのに一切音楽をしていないのが爽快だったが、後半はロッキング・オンを読み始めて意識高くなってしまった中学生がロック哲学を語る漫画になってしまった。薄っぺらい思い込みに、拙い演奏、有名ロックフェスに出場出来るかと思いきや現実厳しく敗退。夢破れてあのときの熱量は一体なんだったんだろうか・・・?と、主人公達が自己批判しているところで連載終了。学生時代に『俺はバンドでプロになる!』って息巻いていた同級生が数年後全員失敗しているようにあまりに現実的な表現の結末が切なかった。もちろんそれは作者自身の連載打ち切りと被せたダブルミーニングになっている。
神性を演出するにはロックバンドはあまりにも歴史的に敗北しすぎているし、故に説得力が幼く見えてしまうんですよね。なんで君がそれを好きになったのか?それは語りすぎている人達がいるおかげじゃないのかい?ってね。
●『ダンス・ダンス・ダンスール』ジョージ朝倉
一方でジョージ朝倉の『ダンス・ダンス・ダンスール』は少年の動機付けを上手く描けていると思う。主人公はアクション映画監督の息子でジークンドを習っている。部活はサッカーだ。ロックバンドにも憧れる年頃で友人とバンドを結成しようぜ、と語り合っていることもある。それらの可能性を全て捨ててバレエに打ち込むようになる。男の子はぜんぜんやっていないバレエに打ち込むようになるのだ。女の子ばかりでかっこよくもないイメージがつきまとうバレエを主人公がはじめるのに強い動機付けが必要だ。
一話目から動機付けの伏線を少しずつ貼っているが、主人公自身が周りが押し付けたイメージを跳ね除けてくれたのは同じバレエ教室に通う天才少年が見せてくれた表現だった。自身の内面に潜む神性に気づいたのだ。幼き日に見たバレエに心を奪われた自分自身に気づき、他の物を捨てる覚悟ができる。思春期の付近にある部活動やバンドをやらなかったのは彼自身が望んでいたことじゃなかったんですよね。他人のかっこよさではなくて、自分の価値観で動けるようになった。ジョージ先生最高です。