なつやすみ日記

猫のような日々

週刊ビックコミックスピリッツ2016年17号

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いきなり打ち切り最終回のようなシーン。

 

前作も野球漫画を描いていた中原裕先生。今作はいきなり高校三年生の最後の試合から舞台をはじめています。ガンダム富野由悠季監督の作品のように文脈は知っていて当然!と言わんばかりに読者置いてけぼりでストーリが進んでいます。25巻目から読み始めた野球漫画と言えばいいでしょうか。そもそも野球関係の不祥事が続いているのに爽やかな青春ストーリを見せられても共感ができにくいんですよね。この後、主人公がどういう道に進むのかわかりませんが、トライアウトを受けて二軍スタートをしたら覚せい剤を勧められたとか、大学進学をしたら女子マネージャを集団レイプしそうになって主人公がブチ切れるとか見てみたいです。

のりつけ雅春先生が別のギャグ漫画を描いたらつまらなすぎた挙句の果てにアフロ田中を復活連載させたように権謀術数の駆け引きを楽しむ野球漫画に路線変更するかもしれません。ちなみに今週のアフロ田中は夢オチ天丼ギャグで久々におもしろかったです。

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赤堀君先生は2012年に佳作を受賞したばかりの若手です。「ぐりこカミングスーン」が初の週刊連載。音楽枠。「憧れだったバンドは考えているよりもずっと遠くにあった・・・俺たちの夢は何だったんだ・・・?」と打ち切りを食らった「モッシュピット」のようにバンドマンの9割9分は自己満足オナニーをひたすらし続けている気持ち悪い人たちなんですよね。大学の広場で歌っているときはかっこよかったけど、社会人になると彼氏との比較対象が増え、「あれ?こいつ何も作ってなくね?」と気づき破局するのは恒例行事です。そんなダメ男に惚れているグリコちゃんが主人公の漫画「ぐりこカミングスーン」。

 

バンドマンは幼稚なクズ野郎だから、練習が必要でかっこいい大人の男がやっている音楽を描こう・・・それってなんだ!ジャズだ!!!石塚真一先生の「BLUE GIANT」だ!ジャズ漫画がこんなに売れたのはじめてでしょ!!!

BLUE GIANT 1 (ビッグコミックススペシャル)

BLUE GIANT 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

 じゃあ?女の子の音楽は?・・・言うまでもなくアイドルなんですよね。このアイドルブームはいつまで続くのか。2012年頃にアイドルブームは下火になると某音楽評論家の予測は大きく外れています。一方で某音楽評論家が押していたインディ・ロックバンドは解散に追いやられる、メジャーデビューしても半年後には空中分解するという状況なんですよね。

 

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ダメ男に貢ぐためにグリコちゃん。

 

経済的に続けられる可能性が若手に残されているのがアイドルグループなわけだけど、それすらも市場原理主義の暴力に飲まれていることは変わりない。真鍋昌平先生の短編「アガペー」や大森靖子さんの存在が表しているけど、アイドルになりたいのになれない絶望を描くように、葛藤の末にメンヘラ化している女の子が目立つようになっている。アイドルデビュー→AVデビュー→失踪?のようなケースは後を絶たないし、清楚系AVという欺瞞に誰もが気づくように、アイドルという言葉自体に清潔感を失いつつあるんですよね。だから、アイドルになりたくないのに卓越した才能を持っている主人公という設定にすることで清潔感を保っている。アイドルやりたかったら汚いからね。

 

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今週の団地ともお藤子・F・不二雄先生を彷彿させるショートショートSF。ちょっと前までギャグの切れが失速気味だったけど、最近徐々に改善しつつあると思う。数週前のともおがスティーブ・ジョブズのコスプレをするのは爆笑しました。もちろん特徴的なプレゼン付き!

 

今作は時間をお金で買い取ってくれる時間セールスウーマンがともおの前に現れる。勉強の時間やマラソンなどやりたくない時間を全て売り払っていたらおじいちゃんになってしまっていた。作者も中年男性のともおを描くのははじめてだろう。設定自体はありがちだけど、オチのつけ方に一捻り加えるだけで作家性を示すのは"流石"の一言を贈りたい。

 

 

週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年17号 [雑誌]

週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年17号 [雑誌]