なつやすみ日記

猫のような日々

週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年15号

僕は週刊スピリッツの長年の読者である。

僕は週刊ビッグコミックススピリッツを長年読み続けている。浦沢直樹氏が20世紀少年を連載していたころからだから15年に渡って読み続けているわけだ。しかし、最近は売り上げが低迷しているせいかコンビニで手軽に購入することが難しくなっている。2、3店渡り歩いて一冊在庫があればいいほうだ。編集部もこの事態に気づいてきたのか他誌に遅れながらも2016年1号から電子版を配信するようになっている。  ちなみに現在の発行部数は約16万5000千部程度である。

 

週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年15号 [雑誌]

週刊ビッグコミックスピリッツ 2016年15号 [雑誌]

 

  

人気が無ければ10週の連載で打ち切る少年ジャンプのように、スピリッツも打ち切りのお家芸がある。鳴り物入りで始まった連載、しかし、巻末方面で連載が目立つようになりいつの間にか他誌に島流し、無かったことにされるという編集方針である。最近は曽田正人氏のテンプリズムが他誌どころかWeb連載に島流しされるという事態が起きている。

 

その他、某大手広告代理店と繋がりが強いことで知られている。メディアミックス戦略の一環として連載している作品がいつまでも連載していることがある。大人の都合で打ち切りに出来ないのだ。その他にも大御所作家の暴走、週刊誌である必要性がないほど毎週連載しない作家が多いため、号によっては看板作品が一つもなかったり、色々と素敵な雑誌である。

 

2016年15号は以下の掲載でした。

天真爛漫!お披露目グラビア「菅井友香×土生瑞穂×平手友梨奈」

●人気快走!駅伝大会開幕カラー『かなたかける』高橋しん

●メガヒット巻中カラー『恋は雨上がりのように』眉月じゅん

●IH予選クライマックスカラーあさひなぐこざき亜衣

●『アイアムアヒーロー』映画化記念アンソロジー第4弾!乃木坂太郎

●『土竜の唄高橋のぼる

●『アイアムアヒーロー花沢健吾

●『くーねるまるた高尾じんぐ

●『アオアシ』小林有吾

●『闇金ウシジマくん真鍋昌平

●『世界はボクのもの』若杉公徳

●『HIKARI-MAN』山本英夫

●『100万円の女たち』青野春秋

●『村上海賊の娘』和田竜+吉田史郎

●『夕空のクライフイズム』手原和憲

●『ダンス・ダンス・ダンスール』ジョージ朝倉

●『おかゆねこ』吉田戦車

●『シェアバディ』吉田貴司+高良百

●『僕はコーヒーがのめない』福田幸江+吉城モカ+川島良彰

●『猫工船』カレー沢薫

●『ふろがーる!』片山ユキヲ

●『ふつつかなヨメですが!』ねむようこ

●『るみちゃんの恋鰹』原克玄

●『させよエロイカ』高田サンコ

●『天そぞろ』あかほり悟+北崎拓+堀口菜純

●『気まぐれコンセプトホイチョイ・プロ 

今号のハイライト

『かなたかける』高橋しん

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高橋先生は箱根駅伝出場経験者らしい。とりあえず前作花と奥たん』の完結をあんまり覚えていないのですが・・・突っ込みは野暮でしょうか。今作もスピリッツのお家芸であるフェイドアウト型打ち切りに合わないか若干不安です。連載8回目。

闇金ウシジマくん真鍋昌平

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沖縄編。サンサンと照りつけるような太陽に青い海というイメージと正反対のイメージを突きつけてくる。空洞化する郊外が永遠と広がっていくだけなのだ。実際、沖縄の失業率生活保護率やひきこもり率の割合は全国トップクラスである。逃亡者である Mを捕まえようと牛島が迫る。

●『HIKARI-MAN』山本英夫

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前週から連載再開。このまま島流しにされないかヒヤヒヤしていたが山本先生は単純に筆が遅いだけのようだ。ホムンクルスも休載続きだったもんね。山本英夫先生はキチガイを描かせたら天下一品。「ニャ〜」って擬音が怖すぎる。謎の発光体に変身した主人公 vs サイコパス格闘家の戦いがはじまる。今作のライバル扱いになりそうなキャラクタとの一戦。

・次号予告

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またかよ!またバンド漫画かよ!世界最強の男がロックバンドでも頂点を目指すという「モッシュピット」の後釜枠なのでしょう。最強の男が不良高校で乱闘を繰り広げて圧勝してしまったり、バンド漫画なのに一切音楽をしていないのが爽快だったが、後半はロッキング・オンを読み始めて意識高くなってしまった中学生がロック哲学を語る漫画になってしまった。薄っぺらい思い込みに、拙い演奏、有名ロックフェスに出場出来るかと思いきや現実厳しく敗退。夢破れてあのときの熱量は一体なんだったんだろうか・・・?と、主人公達が自己批判しているところで連載終了。学生時代に『俺はバンドでプロになる!』って息巻いていた同級生が数年後全員失敗しているようにあまりに現実的な表現の結末が切なかった。もちろんそれは作者自身の連載打ち切りと被せたダブルミーニングになっている。

神性を演出するにはロックバンドはあまりにも歴史的に敗北しすぎているし、故に説得力が幼く見えてしまうんですよね。なんで君がそれを好きになったのか?それは語りすぎている人達がいるおかげじゃないのかい?ってね。

●『ダンス・ダンス・ダンスール』ジョージ朝倉

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一方でジョージ朝倉の『ダンス・ダンス・ダンスール』は少年の動機付けを上手く描けていると思う。主人公はアクション映画監督の息子でジークンドを習っている。部活はサッカーだ。ロックバンドにも憧れる年頃で友人とバンドを結成しようぜ、と語り合っていることもある。それらの可能性を全て捨ててバレエに打ち込むようになる。男の子はぜんぜんやっていないバレエに打ち込むようになるのだ。女の子ばかりでかっこよくもないイメージがつきまとうバレエを主人公がはじめるのに強い動機付けが必要だ。

 

一話目から動機付けの伏線を少しずつ貼っているが、主人公自身が周りが押し付けたイメージを跳ね除けてくれたのは同じバレエ教室に通う天才少年が見せてくれた表現だった。自身の内面に潜む神性に気づいたのだ。幼き日に見たバレエに心を奪われた自分自身に気づき、他の物を捨てる覚悟ができる。思春期の付近にある部活動やバンドをやらなかったのは彼自身が望んでいたことじゃなかったんですよね。他人のかっこよさではなくて、自分の価値観で動けるようになった。ジョージ先生最高です。 

 

『忘却のさちこ』新宿「上海小吃」

週刊スピリッツで連載中の『忘却のさちこ』というグルメ漫画がある。結婚式を彼氏にバックれられたという悲しすぎる過去を持つ女性が主人公のさちこさん。さちこさんは美味しいものを食べている間だけ悲しい出来事を忘れていられる性格です。

 

基本的に実在する飲食店を取材して漫画にしているようです。でも、店名や地名はあまりはっきりさせない。知っている人だけがわかるようにしてあるんですよね。少し前に新宿歌舞伎町にある上海小吃を取り上げていました。

 

nemurenai-same.hatenadiary.jp

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上海小吃は歌舞伎町の薄暗い路地中という立地だったり、日本語が通じなかったり、日本人から見るとゲテモノとしてか思えない料理があるし、お酒の持ち込みも可能だったりするせいで*1、歌舞伎町の路地に迷い込んだら東南アジア方面にワープしてしまったような錯覚を授けてくれる。もちろん味付けも日本人の味覚に合わせたローカライズはしていない。まるで歌舞伎町を根城とするチャイニーズマフィアの食堂になっていそうな雰囲気が魅力なんですよね。実際、インファナル・アフェアという香港制作のマフィア映画の撮影に使われているそうです。

 

上海家庭料理の店「上海小吃」の紹介 - YouTube

 

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狭い路地にお店が二つ連なっているのも東南アジアぽい。店員さんは路地を跨いで料理を運んでいる。

 

もともと上海小吃はサブカル界隈の人たちに有名なお店で僕もライターの九龍ジョーさんに教えてもらった。どういう経緯かわからないけど、おしゃれ雑誌やテレビ番組でよく取り扱われたりするのは何らかの背景があるからだろう。雑誌編集者やテレビマンがこの辺りで飲み歩いていたからだろうか。

 

ローカライズをしていないので日本人には馴染みの薄い食材も使っているんですよね。昆虫や内臓類の変わったメニューもあるから、ゲテモノ好きにも知られているんだけど、上海小吃の看板メニューは「蛤の甘辛炒め」と「あげパン」のセットですよ。

 

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そのまま食べても美味しいんだけど、蛤のスープに浸してから食べると気分はもう上海。

 

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あげパンを浸して食べたサチコさんのセリフが上海小吃の魅力をまとめています。

 

「あ・・・この濃い目の甘辛なタレが、あげパンの甘さをさらに引き立てて・・・!!この雰囲気にこの料理・・・まるで旅行しているみたい・・・!!!」

 

そうなんですよ。旅行しているみたいなんですよね。新宿歌舞伎町にどこでもドアが設置してあって異国に行けてしまうわけです。上海小吃はそういうお店です。以上。

 

D02 地球の歩き方 上海 杭州・蘇州 2015?2016

D02 地球の歩き方 上海 杭州・蘇州 2015?2016

 

 

 

*1:ビール瓶はダメで缶ビールの持ち込みは何故か大丈夫だった。こういう理不尽なところも外国ぽい

誰でも入れるコミュニティは不届き者を集める

善意で運営されている勉強会に業者がうようよと入り込んでくるというエントリー。

www.bokukoko.info

 

古今東西、人間が集まる場所には不届き者が現れる。例をあげればキリがないがセクトやマルチ、カルト・・・etc・・・誘蛾灯に集まる害虫の如くどこからともなくやってくるのだ。ファーストコンタクトは大学入学時だろうか。多くの人がそうであるように中学、高校とクローズドなコミュニティに属している間は彼らと接触する機会は少ないだろう。多くは大学や社会人からではないだろうか。そう。偽装学生団体やサークルが新入生を食い物にしようとするのは桜の咲く季節の恒例行事である。

 

知っての通り運営側も黙って見ていない。新入生には偽装サークルに注意してください、という旨が伝えられるし、学内に彷徨く不届き者を排除するのも職員の仕事の一つである。二年生になる頃には時代錯誤なアジテーションたっぷりのビラを配っている集団を生暖かい目で見るようになる。Twitterで「あいつら毎日毎日うるせーな」って悪口を呟くようになるのだ。

 

コミュニティがオープンであればあるほど彼らは入り込みやすいし、クローズドであればあるほど彼らは入り込めなくなる。必然的にコミュニティの安全性もクローズドになればなるほど高まっていくのだ。しかし、当たり前のことだが人間は歳を取って死んでしまう。メンバーの流動性が無ければメンバーは減っていきコミュニティが縮小していくということである。死ぬ、は誇大表現かもしれないが、関心が薄くなる、引っ越し、結婚など様々な都合でコミュニティを離れることが考えられる。

 

 数日前に以下URLのエントリーを読んだ。詐欺まがいの勧誘をしている業者に某書店が場所を貸していた。最終的に客足が遠のき閉店してしまったという内容だ。

nakamorikzs.net

 

わざわざ自分から不愉快になる場所に近づきたくはないし、詐欺師の発生がコミュニティの衰退を招くのは必然である。 外部に開かれているコミュニティの運営者は全力で不届き者を排除するようになる。ただ、外部の人間から見ると健全か不健全か判別がつき難いことが多い。趣旨や事業内容でうっすらと推測することができるが、確証することは難しい。

 

最近、僕のマイブームは海外のボードゲームだ。その中に無人島を開拓するゲームがある(推測してください)。グーグルで検索するとある匿名記事が表示される。ゲームを推進する団体が犯罪紛いのことをしていると暴露しているというものだ。そのゲームを推進する団体は他にもあるのだがその団体が主催する大会でもマルチビジネスに誘われたという噂は枚挙に暇がない。*1

 

不届き者が健全なコミュニティの衰退を招くと書いたが、コミュニティが元々真っ黒である場合は別である。例えばとある某有名シェアハウスのパーティに参加したらマルチや派遣に登録させられそうになったという話がある。シェアハウス募集サイトのcolishを眺めるとヤクザのフロント企業が経営しているのでは?と思う物件もちらほらある。

 

排除する、というのはリベラルな人ほど嫌う傾向にあると思うが、国家が入国管理局や税関を設けるようのと同じである。設けなければ邪悪な者や兵器が無尽蔵に流入してくるからである。包摂は排除を伴い、排除しないことは包摂しないことにもなる。

 

奇妙なことに市町村レベルの行政が運営しているコミュニティ◯◯(カフェ、スペース、ルーム)は市民ならば誰でも入れる場所になっている。邪悪な存在の巣窟になっていることは言うまでもない。国家レベルならば排除しているのに市町村レベルでは包摂しているのが現状だ。彼らも市民税を払っているから税金で作った施設で拒否することは出来ないかもしれないが・・・。

 

運営者側はオープンでいればいるほど彼らの排除に務めるわけだが、彼らは反社会的な存在だ。何を言っているのだ、と思うかもしれないが、社会に馴染めないから反社会的な行動をしているということだ。つまり、反社会的な精神性を持っている人物であることが非常に多い。そして、自分自身の精神を磨り減らす対応に迫られることも少なくないのだ

 

結局、普通の人にとっては会社や学校以外のコミュニティは『行かない』『作らない』『関わらない』ほうが得策だったりするのだ。しかし、インターネットのサービスはアレな人の意見を機械的に排除していることがある。現実社会のコミュニティにも似たような仕組みがあればいいと思うことがある。逆恨みはされたくないからだ。

 

 

詐欺とペテンの大百科

詐欺とペテンの大百科

 

 

 

*1:ボードゲームは定期的に流行の兆しを見せるがいつも尻すぼみで終焉を迎える。不届き者がコミュニティを荒らすことが原因の一つになっているのかもしれない。単純に絵映えしないし、ルールを覚えるのが難しいというのもあるのだろうが・・・。

ミドリムシラーメンの山手ラーメン本郷安庵

東京大学本郷キャンパスの目の前にミドリムシを大量に煮込んだラーメンを販売している店がある。孤独のグルメで一躍有名になってしまった赤門ラーメンにしようか迷ったけど、わけのわからん食べ物を食したい気分だった。ミドリムシラーメンを食べることに決定。

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一杯にミドリムシが七億匹入っているらしい。

 

奇を衒った食べ物は案外と普通の味である。個人的にミドリムシぽい未知なる新味覚を求めていたんだけど、ペペロンチーノか、バジルパスタか、具にパプリカがあるように冷凍食品のイタリアンのような味のラーメンだった。意外性ゼロ。口に入れる瞬間まで「これほんとうにたべるのかよ?」と心臓がドキドキしていたのが馬鹿みたいだ。というか、ミドリムシラーメン頼んでいる人は僕だけだったよ!!!!常連的に頼んではいけない気配があった・・・。周囲の東大生らしき学生の注文は全員普通のラーメン。

 

tabelog.com

 

東大ベンチャーである株式会社ユーグレナミドリムシを卸しているらしい。ミドリムシを食べたのは人生で初めてだったけど、無臭無味だったので(ひょっとしたらバジルやオリーブオイルの香りで飛ばされているだけかもしれないが)可能性がある食品なのかな?と思い始めている。

 

www.euglena.jp

 

ユーグレナは沖縄のファミリーマート限定でミドリムシパンを売っていたり、サプリメントや化粧品になっていてワロタ。ミドリムシが喉に寄生しそうなイメージを想起させるユーグレナのど飴がすてきだね!

 

味覚糖 ユーグレナのど飴 71g×6袋

味覚糖 ユーグレナのど飴 71g×6袋

 

 

バイオザイム(BIO ZYME)100粒 1個 ユーグレナ みどりむし

バイオザイム(BIO ZYME)100粒 1個 ユーグレナ みどりむし

 

 

ユーグレナ緑茶もやばい。緑と緑のコラボレートだ。

 

ユーグレナ緑茶 パウダー 40g

ユーグレナ緑茶 パウダー 40g

 

 

ユーグレナは半分冗談で作ったような商品をたくさん作っている。ただ、ユーグレナはユーモラスな部分だけではなくてミドリムシを航空燃料にするというベンチャー企業らしい計画もある。成功すれば莫大な富を生むことは間違いない事業だ。ヘンテコなラーメンから航空燃料に繋がっていくSFみたいな背景があるんですよね。*1

 

ラーメン屋のオヤジ「ここの具材で飛行機飛んでいるんですよ(ニヤリ)」

 

*1:安いパソコンを作っているメーカーが日本転覆を企む宗教団体だったのはオウム真理教

Google検索演算子を使ったいけないファイルの探し方

インターネットでちょっといけない動画を探すときはGoogleの検索演算子を使うと便利です。大抵のいけない動画はyoutubeニコニコ動画にアップロードされると削除されてしまっているので以下のように検索結果から除外してあげると見つかりやすいです。

-site:youtube.com

またOR演算子をつけてあげると除外したいURLを無制限に繋げていくことが可能です。いけないファイルを探すときに便利だね(なげやり!!!) 

-site:youtube.com OR nicovideo.jp  OR amazon.com

 

参考URL

support.google.com

search.nifty.com

地域社会とコミュニティのはなし

黄金町の試聴室という喫茶&レコード酒場が閉店する。

音楽評論家の岡村詩野さんが言及しているように日本のインディロックが好きな人にはそれなりに知られている場所だ。

大家のNPOとは黄金町エリアマネジメントというまちづくり会社のようだ。設立する経緯は各々異なるが、全国的に設立されつつある組織の一つである。まちづくり・・・まちおこし・・・シャッター商店街の問題解決・・・地域社会の問題を解決するのを目的としているようだ。この手の社会活動に関心がある人は知っているが彼らは決まってアートや音楽を町おこしの手段にする。これはジェントリフィケーションと言われている手法だ。 

都心近接低開発・低所得地域(インナーシティ)に上流サラリーマンや若手芸術家など、都市の活性化を引き起こすキーパーソン(=ジェントリファイヤー)が移り住むことで、自然治癒的に地域環境が向上する。典型的な事例として、ニューヨーク市が挙げられる。1950年代、工場や倉庫の廃屋が並び立つSoHo地区に安価な居住を求めて芸術家やミュージシャンが移り住み、カウンターカルチャーの中心地となった。それによって地域に文化的、社会的な高級化がもたらされ、求心性を獲得した地区には中産階級が流入する。さらに彼らを対象にした商業施設が増加し、結果、住区では低所得者層から中・高所得者層へと居住者の階層の入れ替えが起こった。こうした地域の高級化は、持続的なインフラの整備や治安の向上などの恩恵をもたらすため、都市の不動産から投機的な利益を得ようとする人々や、都心部に中・高所得者住民を定住させ、雇用機会を確保しようとする行政側に歓迎される。

ジェントリフィケーション | 現代美術用語辞典ver.2.0

 

端的に言ってしまえば街の再開発にアートを使うことである。といっても日本の美術市場は米国や欧米と比べると微々たる物で現代アートに限っては会田誠ですら企業の係長レベルの年収だそうだ。というか現代に生存している芸術家の常設展がほとんど存在しないことは日本に生きている誰もが知っている。美術館が展示している作品は古いものばかりだ。そもそも美術市場がほとんど存在しないのに文化的価値や社会的な高級化が高まるのだろうか?先日、行政がシリコンバレーに憧れてコワーキングスペースを作りまくっているというエントリーを投稿した。米国の都市部は家賃が高すぎてオフィスを借りれないから仕方なくコワーキングしているのだけではないか、と書いたがアートや音楽でまちづくりをするのも同じ話だろう。社会的背景を見ずに耳触りの良い結果だけを輸入して実行に移しているのだろう。 Facebookの創設者のようにWebサービスでミリオネアになろう、アンディ・ウォーホルのように何十億円で取引される作品を作ってミリオネアになろう、ハリウッドでスターになってミリオネアになろう・・・欲望が渦巻いた人間が集まった結果、憧れのスター達がいる地域の不動産価格が高騰するのは容易に想像できる。みんなそこで一発当ててやりたいからだ。*1

 

そうえいば黄金町の試聴室はNPO側から「黄金町(地域)での活動に貢献していないと」と指摘されたそうだ。ここである論文を引用したい。

都市社会学のパーソナル・ネットワーク論の知見では,制約の大きい既婚女性,高齢者,社会経済的地位の低い者は〈場所に根ざしたコミュニティ〉を形成しがちであり,制約の少ない男性,若者,社会経済的地位の高い者は〈場所を超えたコミュニティ〉を形成しがち(松本,2001:81)であることが明らかにされてきた。この知見を裏返してみると,社会的条件が不利な層に対して,セーフティネットとして〈場所に根ざしたコミュニティ〉を強化するべきだという主張も十分説得力を持つはずだ。

人間発達学研究 第3号 コミュニティと排除(上) 松宮 朝 P45

 

 

 

場所に根ざしたコミュニティとは地域社会のことであり、場所を超えたコミュニティとは時間や空間に制限を受けにくいコミュニティのことである。少し分かりにくいかもしれないがようは電車や車に乗れるか乗れないかの差異である。例えば黄金町の試聴室は全国から出演者を呼んでいる。お客さんは東京圏に住む人たちを大勢呼んでいるだろう。場所に囚われていないということがわかるだろうか?一方で専業主婦は街から出る必要もないし、仮に働いていたとしても既婚女性の正規雇用率は低いため郊外のベッドタウンのスーパーか何かでパートをしているケースが増えてしまう。そのため地元のコミュニティと密接な関係になりがちだ。既婚女性,高齢者,社会経済的地位の低い者が地域社会とコミットしやすい理由は引用先が引用している論文集『都市化とコミュニティの社会学』に詳しく分析している。百聞は一見にしかず、FAAVOという地域社会のコミュニティのためのクラウドファンディングサービスを見てもらえば理解するだろう。

地域 × クラウドファンディング | FAAVO(ファーボ)

 

見ているとうんざりな気分になってくるがこれが地域社会というフワッとした言葉の正体だろう。既婚女性,高齢者,社会経済的地位の低い者がコミュニティの中心にいる。経済の基本原則として資本主義はヒト・モノ・カネの流通を活発にすればするほど経済は活性化しやすい。地域から動けない彼らが有益な経済活動が出来るのだろうか。投資している人たちを調べると地域社会の友人達であったりするのだ。カネやヒトも地域から動いていないのだ。

 

黄金町が廃れた理由は風俗街を徹底的に取り締まったからだそうだ。少なくとも風俗街は地域の外から人間を呼びお金を落として経済を活性化させる側面がある。なぜなら必然的に風俗街で働く人達やお客さんのために飲食店も栄えることになるからだ。が、地域社会の住民自身がつぶしてしまったそうだ。まるで間抜けではないかと嘯きたくもなるが、一つわかることがある。地域外から人間を呼ぶのを好まないという可能性、そして自分たちの地域を綺麗にしたい、彼らが思うままに貢献してほしいという欲望が垣間見える。

 

日本全体で問題になっている空き店舗の大家は経済的に困っていないため空き店舗になっていることがほとんどである。本当に経済的に困っているのであれば売却して全国チェーンのファーストフードかコンビニになっているからだ。そして、先ほどの論文を参考にすれば地域社会に高くコミットしているのは高齢者か既婚女性である。経済的には困っていない、彼らが儲かる風俗街を排除しても何も困らない立場だ。

 

黄金町のアーティストインレジデンスをざっと眺めると地域社会の外部から人間を呼んでいる団体は多くはない。あと、気になったのが地域の啓蒙運動や盛り上がりに欠ける地域のアートイベントに参加している人達が目に付いた。

穿った見方だが、地域の外からたくさんの人を呼んでいて目障り、あいつら地域の活動だってロクに参加しないのに・・・地域社会側はこんな風に思っているのかもしれない。実際、前年までNPOが発行する冊子に載っていたにも関わらず2011年に突然紹介ページに載らなかったという不穏な事件が起きている。

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アニュアルレポート発売中! | 黄金町エリアマネジメントセンター|KOGANECHO AREA MANAGEMENT CENTER

詳しい事情はわからない。憶測にしかならないが、ただ一つ言えるのは場所に根ざしたコミュニティ場所を超えたコミュニティがコンフリクト(紛争)を起こしたということではないだろうか。場所を超えたコミュニティには多くの若者がいたし、それなりに名を馳せる人たちもいた、それが地域に縛られている人たちによって壊されてしまったように思えてしまった。全国に散らばるまちづくり会社によるアート活動から誰かを感動させるような物は僕は見たことがない。なぜなら脱臭され尽くされた人畜無害で退屈な物ばかりだからだ。危ないアートはできない、理由はもちろん・・・・。

 

手軽に手に入る場所を超えたコミュニティはインターネットを使えば簡単に作れる。経済的資本は無くても平気だ。文化的資本があればいい。インターネットから始まるユースカルチャーが台頭するのは自然なことだ。一方で場所を超えた人達は身体性を失いつつある。それで本当にいいのだろうか。

「お前はそこで生まれたからといって、そこに居続けなければならないのか? 

INU 305

www.youtube.com

 

 

追記

 

阿川大樹氏曰く風俗街を撤去させてマンションを建てて住民増加させる間の徒花でしかないそうだ。 Togetterを見る限りは住民や税収を増やしているし、無戦略で施策しているわけではないみたいだ。

togetter.com

といってもまちづくり会社に2008年以降から累計20億円以上の税金が投入されている。おまけに寄付も募っているが会計報告は公表されていない。 税金を注ぎ込んだことによる具体的な成果を第三者がまとめるのは異常なことだ。NPO側がまとめるのが本筋であるが、単純に彼らの目的と違うから公表していないのである。

 

10plus1.jp

 

プレディみかこ氏が述べているようにジェントリフィケーションは排除を伴う。ジェントリフィケーションの目的は地価の上昇だ。空き店舗や空き家など様々な問題定義はブラフになっており、徒花としてアートを使って邪魔な人間を排除する。そしてマンションのような効率的に多くの人間を収容できるスペースを建設する。全国各地のまちづくりが成功しているか、失敗しているか、是非はともかく、このような目的やリスクを公表しているところを僕は知らない。 

*1:追記参照。実は邪魔な人間を排除することで地価を上げることが目的だったりもする

行政が作るコワーキングスペース

コワーキングスペース、インキューベーションオフィス、シェアオフィス。最近、そういった施設を行政が設立している。例に漏れず僕の住む東京都郊外にも存在している。ただし利用者はほとんどいない。言うまでもないが施設維持には税金が投入されている。

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平日の午後5時過ぎだったが利用者はゼロ。利用時間内にも関わらず利用者が誰もいないから室内の明かりは消されていた。場所は東京都羽村市羽村市産業福祉センター内にある。名称は「iサロン」だ。福祉センターの職員に尋ねてみると月間利用者数は僅か30人足らずだそうだ。僕やあなたは羽村市の地縛霊とビジネスの情報交換ができる、ということだ。

https://www.city.hamura.tokyo.jp/0000008179.html

 

羽村市産業福祉センターは羽村図書館の隣にある。僕は本を借りるついでに覗いてみた。撮影した写真はその時のものだ。後日、本を返却するときにまた様子を覗きに行くと利用者が誰もいない室内に派遣された中小企業診断士が暇そうに書類を眺めていた。「暇そうですね」と声をかける。僕は彼と雑談をすることにしたのだ。そして彼が教えてくれたのだが東京都は創業支援施設の開設を進めているらしい。さらにムーブメントは東京都に限った話ではなく、全国的な動きになっているそうだ。地方在住の知人友人曰く「私の街にもできた」と・・・。もちろん利用者はあまりいない上に傍目から見て何かの成果が出ているようにも見えないとの談。試しに適当に『◯◯県 コワーキング』と検索すると地獄のような光景が広がる。

 

首相官邸がプレスリリースしている日本再興戦略改定2014改訂に以下のことが書かれている。

ベンチャー支援
ベンチャー支援については、より効果的で、従来の取組にない施策を
実行することが必要である。
①「ベンチャー創造協議会(仮称)」等による大企業の巻き込み
ベンチャー企業そのものに焦点を当てた施策、大学発ベンチャー
支援などの従来の施策のみならず、既存企業を含めた日本経済全体
での挑戦を推進するため、以下の施策を講ずる。
ベンチャー企業と大企業との連携や大企業発ベンチャーを創出す
るため、大企業内に眠る起業希望者の一時的な受皿となることも
視野に入れつつ、ベンチャー企業と大企業のマッチングやビジネ
スシーズの事業化を支援するプラットフォームとしてベンチャ
ー支援に協力的な大企業等から成る「ベンチャー創造協議会(仮
称)」の創設
・全国津々浦々のベンチャーに取り組む個人や団体の「出会いの場」
としての情報ハブの構築
国際会計基準IFRS)の適用促進等を通じた大企業等との M&A
よるベンチャー企業の出口戦略の拡大
・兼業・副業等の促進や日本政策金融公庫等の低利融資制度拡充に
よる廃業資金を含めた第二創業の支援
・創業希望者をプールした「後継者人材バンク」の開設
クラウドファンディングを活用した地域資源活用型ベンチャー
の起業支援モデルの検討
・種類株式活用促進策の検討

日本再興戦略改定2014改訂 P33

全国的に施設が出来ているのは国家政策に依るものだろう。日本再興戦略改定2015改訂 ベンチャーの定義も書かれている。

(1)「稼ぐ力」を高める企業行動(≒前向投資)を引き出す
ⅰ)「攻め」のコーポレートガバナンスの更なる強化
・企業と投資家の建設的対話の促進(株主への情報開示促進)
・成長志向の法人税改革
・民間投資促進に向けた官民対話
ⅱ)イノベーションベンチャーの創出
・「ベンチャー・チャレンジ2020」の推進
-米・西海岸レベルの国際的拠点形成
(特定研究大学、卓越大学院)
シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト、
エコシステムの形成
イノベーション・ナショナルシステムの本格稼働に向けた
大学改革
-運営費交付金の重点配分導入による大学間競争の促進
ⅲ)アジアをはじめとする成長市場への挑戦
・「質の高いインフラパートナーシップ」の展開
(2)新時代への挑戦を加速する(「第四次産業革命」)
・IoT・ビッグデータ人工知能による産業構造・就業構造変革
の検討
-民間投資と政策対応を加速化する官民共有の羅針盤策定
・セキュリティを確保した上でのIT利活用の徹底
-サイバーセキュリティ対策の抜本的強化
-IT利活用の推進、マイナンバー利活用範囲の拡大

日本再興戦略改定2015改訂  P1

どうやら政府が定義するベンチャーとはシリコンバレーに存在する企業群を指すようだ。米国で普及しているコワーキングスペースを日本各地に作るのも政策の一環なのだろう。ただし、米国の都市部で一般的になっているシェアハウスもそうだが、コワーキングスペースが盛んな理由の一つは米国の都市部の家賃が尋常ではないためだろう。

シリコンバレーでは、この10年ほどでIT系の職が急増したが、同時に家賃も高騰した。ワンベッドルームのアパートの平均的な月額家賃は、サンノゼで2186ドル、オークランドで2469ドル、サンフランシスコでは3361ドルにもなる。

http://usfl.com/2015/10/news_articles/90657

これはシリコンバレーに限った話ではなく米国都市部の家賃は高額であることで知られている。つまりシェアハウスが一般的な理由は家賃が高額であるためだ。必然的にシェアハウスに住む人間がオフィスを借りることが出来るわけもない。オフィスをシェアすること、コワーキングのような文化が発達した理由の一つだろう。そもそもアパートを一人で借りていればそこで仕事をすればいいし登記も借りているアパートですればいいのだがそれができないからコワーキングスペースを借りているのだ。

 

誰もが知るような話としてシリコンバレーでハイテク産業が発達した理由は工学系の大学があったからだ。政府が「西海岸レベルの国際的拠点」を作るために産学提携を掲げる理由も同じだろう。だが、東京大学東工大の付近ならともかく、東京の郊外、いや、大学の影すらもないようなド田舎にコワーキングスペースが作られている。政府からのトップダウンで指示が下り、妄想の産物のような施設が作られる。時代は違えど箱物行政と批判された時代から何一つ本質は変わっていないのだ。

 

箱物教育行政の犯した大罪―国民総愚民化

箱物教育行政の犯した大罪―国民総愚民化

 

 

追記

僕は羽村市青梅市の境目に住んでいる。青梅市にも昨年末にコワーキングスペースが設立された。『おうめ創業支援センター Begin!』だ。

http://www.ome-begin.com/

 

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 やっぱり利用者はいませんでした。

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 本棚にマルチビジネス御用達のロバート・キヨサキの本があった。

 

ここは1日利用に500円、月間3000円で利用出来るそうだ。付近の青梅市の中央図書館は有線LANでインターネットが使えるし、コピー機も使える。「この施設のサービスは図書館でも無料で使えるのですが・・・?」と職員に質問してみたところ自宅で勉強ができないから図書館に行きたい需要があるように有料のコワーキングスペースも存在意義がある、と回答をいただきました。

 

写真の奥に施設のポスターがある。彼はここ数年間青梅市の商工会関係の仕事を請け負っている。市内の人間には知られていることだ。

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僕がお邪魔しているときも清掃業者か複合機のリース業者かわからないが頻繁に営業の出入りがあった。創業と言いつつも皮肉なことに儲かるのは彼らなんだよね。