tofubeats 「POSITIVE feat. Dream Ami」を聴いて思ったこと。
タモリ倶楽部のオープニングの脚部フェチ版だ。tofubeatsの新曲「POSITIVE」は女の子の足をひたすら映していくミュージック・ビデオになっている。軽快なカッティング・ギターの導入部分からダンスフロアが広がる。音の隙間にtofubeatsの肉声、おっと彼の声はコンピューター処理されている。インターネットライクな彼は身体性が低いということだ。現代っ子の寵児が最高のポップミュージックを鳴らす。いつもの安心tofubeatsのサウンドだ。
タモリ倶楽部 オープニング(2008年頃) - YouTube
参加ボーカルの女性はDream Amiさん。存じていなかったので調べてみたらE-Girlsの中島麻未の変名がDream Amiだそうだ。夢見るアミちゃん。27歳の女性が夢見る2015年。メジャーデビューしても抜け切れないインターネットライクなチープなビートに彼女の甘い声。tofubeatsのトラックメイキングはラップトップで仕上げたような”チープ”の調味料を仕込んでくる巧妙さが売りだ。かつてはブックオフで購入したCDをサンプリングの元ネタにしていた。現在はメジャーアーティストをサンプリング対象にしているように感じさせると言えばいいのか。次回作の参加アーティストは以下の通りだ。いや、サンプリング対象と言ったほうがいいだろう。
身内(okadada)、TVタレント、大御所、インディファンを押さえたメンツ。特に注目すべきはSkylar Spenceだろう。Skylar Spenceってだれ?1、2年前にちょっとしたブームになったヴァイパーウェイブのロックンロールヒーロー、Saint Pepsiのことだ。 レーベルと契約する際に名前が法的に問題になったため変更したそうだ*1
彼もインターネットが無ければトラックメイキングをはじめていなかった出自を持っている。インターネットに転がっているオープンソースのソフトウェアを使ってトラックメイキングをはじめた。アップロード先はBandcampやSoundcloudというWebサービス。もちろん無料で使える。サンプリング先の音楽はインターネットを使えばいくらでも引っ張ってこれる。音楽制作が民主化したために現れたミュージシャンだろう。ようするに普通の市民なのだ。*2
インターネット、音楽制作機材の低価格により、資本主義的な価値は著しく下がった。派手なヒーローは死につつ、地味な普通のヒーローが誕生した。SF映画『インターステラー』で荒廃した未来の街で地味な草野球が娯楽と化すように。
様々な著名人をサンプリングすること、それは各々のパブリシティに貢献する効果もある。ラジオ局、テレビ局に対するビジネス上の理由、身内やSkylar Spenceを採用する理由はインディファンに向けた配慮。というかそれすらもある種のパプリシティなのかもしれない。そうだとすれば様々なパプリシティの合成獣(キメラ)と呼ぶべきか。いや、リミックスと呼ぶべきだろう。ブックオフの薄汚れた古本から煌びやかな芸能界のカクテル。歪でグロテスクなゲテモノなポップミュージックへ。地味な普通のヒーロー、怪物的な突然変異を J-POPの世界で繰り広げているのだ。